運動科学・アスリートの運動能力向上について

スポーツ

以前にトレーニングの記事を書かせていただいた時は、健康維持のためのトレーニング方法について書かせていただきましたが、今回はもう少し掘り下げた内容で脳、意識、筋肉、力、スピードについて自身の経験も踏まえて紹介できたらと思っています。


そもそも運動科学とは?

運動科学とはアスリートが運動能力、競技力を向上させるために運動と身体の関係を科学的に把握し、分析結果などをもとにより効果的なトレーニング、動作方法などを研究することです。これまで多くのアスリート達が研究、実践、修正を繰り返し、今の多くのスポーツの動きなどの形を作ってきました。

視覚の虜

最近の動作の研究などでは多くのデータを活用することができ、動画などで自身の動きを客観的に確認することが容易になりました。確かに自分のイメージしていた動きと、実際の動きの誤差を確認することはできるようになりましたがここで一つ注意しなければならないことがあります。それは人間は自身の動作になんらかの欠点や改善点を見つけるとその部分に直接的に意識をおいて動作を改善、修正しようとしてしまうということです。これを視覚の虜といいます。うまくいかない部分から意識を外してその部分とかかわっている別の部分に意識をおいて修正していかないといけません。


主観から客観へ

身体連動の動画や画像の分析を受けて、その改善点を見つけたとして一つの部分に着目するあまりに、全体の動きとの関連性を忘れてしまうときがあります。客観的な分析結果を主観レベルにまで置き換えていく作業が必要で客観的に理解したことをそのまま動作感覚に繋げようとするとスムーズな動きにならないことが多々あります。客観的世界と主観的世界の二つは全く別のものでそれを繋げるためには翻訳が必要です。二つの世界のズレを理解し二つの世界の対応を考えてそれを結んでいく。
それが運動科学です。

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より体の中心に近いところに意識を

野球やゴルフなどでテイクバックといわれるポジションがあります。バット、クラブの力をボールに伝えるために体を捻転し力をためる位置になるんですが、この時に多くの人は手の位置を強く意識しようとします。体から離した方がいいのか近くの方がいいのか、肩のラインより高く上げたほうがいいのか下げた方がいいのかなど。この考えを否定するつもりはありませんが体の末端に行けば行くほど感覚は鋭くなり器用になっていきます。それはイコール動作の邪魔をしやすいということになります。なのでそこを意識し過ぎてしまうと体の中心の動きから外れてしまいスムーズな動きにならないということが起こってしまいます。手を意識するなら肩や肩甲骨、また股関節などより体の中心に近い所を意識する様にして手から意識を外す練習をしてみることをオススメします。

脳と運動

  • 力と技術について

みなさんは力と技術どちらが大事だと思いますか?これはアスリートの運動能力向上において永遠のテーマであり考え方も個人差があって当然だと思います。私も多くのトップアスリートを見てきましたが技術一本でその道を極めた人、トレーニングをしたことで能力が向上した人、技術とトレーニングをうまく融合させて自身の競技力を向上させた人とさまざまなトップアスリートがいます。このように一人一人によって答えは違うし、その人なりの正解があって当然です。ただ力と技術というものは互いにかかわり合いながら切っても切れない関係にあると私は考えています。力発揮が不必要な技術などはなく、技術を伴わない力発揮などはスポーツにおいては無意味といっていいでしょう。大切なことは自身の能力向上のために日々自問自答し、自身にあった技術の習得、トレーニング方法などを見つけようとする努力、姿勢が必要不可欠だということです。

  • 一対一か、一対複合か?

スポーツの動きは多くの筋肉、骨格を連動させておこないます。複合的な運動を一つひとつの要素に分解して個々の要素を鍛えていきもとの複合運動に戻った時その動きを力強くするというトレーニング方法があります。この時に個々に分けたトレーニングで一つひとつの動きを意識しながら行うことは大切ですが、本来の連動の動きに戻すときに同じように一つひとつの動きを意識しながら動こうとしてしまうと動作がバラバラになってしまう可能性が高いです。個々に分けたトレーニングを一連のスムーズな動作に戻していく必要性があります。

  • 意識と運動

意識や感覚を運動を行うときの脳からの運動指令だと仮定した場合、運動の方向を間違わなければ一つひとつの筋肉、動きを意識しなくても複数の筋は時間配列にしたがってオートマチックにスムーズに動くという性質があります。これは先ほどの動作を分けるという話とつながります。スポーツの競技力を向上させるためにおこなうトレーニングは実際の動きや技術を考慮しながら複数の関節、複数筋の連動パターンにおける出力を鍛えることが重要となります。
となると単独の筋肉を鍛えるダンベルトレーニングなどだけでは限界があり、自身の体重負荷を利用したトレーニング、各スポーツの技術動作に近い負荷設定のトレーニングを行うなど、工夫が必要になります。私の経験談ですが、ダンベル等を使ったトレーニングはあくまで怪我防止のためのトレーニング、胸椎、股関節の屈曲進展などの連動を意識したトレーニングは技術力向上のためのトレーニングと使い分けていました。またこの内容についても改めて書かせて頂こうと思います。

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筋肉、力、スピードについて

ここまでは脳、意識のついて書かせていただきましたが、ここからは筋肉について書いていこうと思います。体を動かすための筋肉、骨格筋の話です。人が力を発揮するときに筋力というものが必要になってきますが、筋力というものはひとつの要因だけでなく複合的な要素が重なって力を発揮します。

  • 筋肉の太さ、筋線維の数

筋肉が引き上げることのできる重さは筋肉の太さに比例します。正確にいうと筋線維の太さに比例します。激しい運動などをすると筋線維の一部が損傷し疲労物質が溜まります。これは数日かけて修復していくんですが筋線維を破壊し修復する際に筋線維が太くなることを筋肥大と言います。筋力トレーニングはこの仕組みを利用したものになります。また筋肉は太いほど力を発揮しますが、筋力を発揮する際にどれだけ筋線維が参加するかによってもかわってきます。

  • 筋線維タイプ

一昔前、人の筋力は大きく分けると力は強いが持久力がない速筋タイプと、力は弱いが持久力に優れた遅筋タイプに分かれていると言われていました。現在は遅筋タイプ、速筋タイプ、中間筋タイプと3タイプに分けられるケースが多いです。この中間筋を速筋よりにするか遅筋よりにするかがトレーニングの方法で大きくかわってきます。この筋線維組成は遺伝的要因で決まることが多いですが、後天的要因によっても運動能力に大きく差が出ることがわかっています。

  • 力とスピードの関係

速い速度を出している時は力は少なく、逆に大きな力を出している時は速度は遅くなります。トレーニングをしている状況を思い描いてください。軽いダンベルを持ち上げるのと、重いダンベルを持ち上げるのでは速さが違うことがわかります。関節動作を行わないアイソメトリック収縮の時に人間の力は最大になります。ただスポーツは動きを伴い、動的筋力を発揮するものがほとんどです。
ということは力だけではなく速度(スピード)が必要になってくるということです。
トレーニングには特異性があり、①スピードゾーン②パワーゾーン③力ゾーンと3種類があり、自身の最大負荷の10~20%の負荷で行うスピードを向上させるためのトレーニング、最大負荷の30~50%の負荷で行うパワーを向上させるためのトレーニング、60~100%で行う力を向上させるためのトレーニングがあります。自身の向上させたい部分を明確にしてトレーニングをおこなっていきましょう。

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まとめ

いかがでしたか?今回は運動科学・アスリートの運動機能向上について書かせていただきました。脳、筋肉だけでもまだまだ紹介できていない部分が多く私自身もこれからさらに勉強が必要です。また今回は筋肉と脳や意識においても自分方向に向いている意識の話をさせていただきましたが、アスリートは外からのプレッシャーというものとも戦っています。大舞台でとてつもないプレッシャーを感じながら自身の最高のパフォーマンスを出さなければいけません。そのためには体のコントロールと同時に自身のメンタルコントロールもしなくてはいけません。またそのあたりも記事にさせていただきたいと思っています。

今の時代はSNS等でいろいろなトレーニング方法、各スポーツにおいての上達方法などが紹介され、簡単に多くの情報が手に入る時代になりました。これは非常に良いことです。
ただひとつ心配なことが情報が多い分これからは自分自身で自分に合ったものを見つけていかないといけないということです。自分にあっているトレーニングは何か?自分にあっている体の使い方は何か?そういったことをすべて自問自答し、取捨選択して自分なりのこれが正解かな?と思えるものをを見つけていく必要があります。アスリートのみなさんがこれだと思えるトレーニング、考え方にであえることを願っています。

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